宇和海の環境と、産業の共生をめざして
コンブ養殖の有用性について
コンブは日本を代表する海産物であり、北海道の特産品でもあり コンブロード(コンブの道)という言葉もある。また、いまや、アメリカでさえも「KOMBU」というタイトルで取り扱われている。
コンブロードは北海道特産のコンブを日本海を航海する船が、十三?(とさみなと)、北陸、山陰、、大阪、京都、沖縄そして中国へと運んで行ったという。また、敦賀、若狭、尾道、坂井、そして小倉、長崎、沖縄を経て中国へとコンブロードはつながり、日本と中国のコンブによる文化交流にその役割を大きく果たしてきた。
コンブロードの終着駅である中国が、200海里規制後の経済水域が日本の四分の一という条件下にもかかわらず、漁獲量を4447万トンと、日本の662万トンの6.7倍の成果をあげ、世界一の水産大国となったのです。 そのポイントの一つに、国策としての北海道産コンブを、日本人が開発した養殖技術を用いコンブの森づくりによる資源増大対策をとったことがあげられる。
コンブ養殖は、わが国でも、国策としてコンブ海中林を全国展開することによって水産資源を持続的に増やし、海藻産業を新たに創りだす可能性があると思われる。
コンブは様々な取り扱いが可能であり、その有用性は高い。コンブは健康食品として利用されるばかりでなく、海中林効果によって産卵場・幼稚仔保育場・魚介類の餌となり水産資源を豊富にし、水質浄化も行う。
さらに、地球温暖化対策として、コンブ養殖は15〜23万トンのCO2を固定・吸収することが試算された。また、コンブはアルギン酸工業を発達させたり、ガン、高血圧などの医薬品分野への応用などが行われている。新エネルギィー源としてのバイオマス材料としての利用も注目されている。コンブ粉末・液体肥料としての効果は発ガン性を促進する硝酸態窒素を減少させ、化学肥料による土壌改良剤として広く使われている。
コンブは様々な分野で利用されるようになっており、いまやコンブは人と自然とが共生する「循環型社会」をつくる自然の供給源ともいえるのです。
コンブの最大の長所は、コンブの消費・利用用途の範囲が広い点
地球温暖化対策として、海洋の果たす役割が大きい。特に海洋のCO2吸収能力の高さは温暖化防止のポイントとなる。その中でも、コンブ類の大型海藻が大きな役割を果たすとともに、海水浄化など地球環境改善にも役立っていることを、共通認識する必要がある。その前提となっているものに、コンブの利用拡大がある。海中林養殖コンブのCO2の吸収・固定効果は、地球上の光合成生物の最高生産力となりうる可能性を持っている。
ただ、ここで知っておかなければならないことは、コンブ海中林のCO2の固定能力は高いが、コンブ自体が回収され消費、利用されなければ、再びCO2を放出してしまう点である。
これより、海中林コンブは、どうしても人間の食用や肥料、医薬品素材、工業用素材などとして利用したり、アワビ、ウニ、サザエなどの食藻動物のエサに用いる必要がある。
幸いにして、コンブは他のCO2固定能力の高い、ラン藻類や、ホテイアオイなどと違ってコンブの需要自体が広く、利用範囲が広い。
地球温暖化対策としてのコンブの消費・利用は、大きく分けると、食用・肥料・工業原料・藻食魚介類のエサになる。
健康食品(医食同源)としてのコンブ
昆布礼讃数え小唄の中に、次の一節がある。
「長命(いのち)欲しけりゃ昆布を喰べよ 四百四病の薬海草(くすりぐさ)」 これは、「北海之水産誌」(1934年)(昭和9年)に、故・中川一雄氏(北海道水産物検査所長)が投稿したものである。
人としてこの世に生まれ、長生きを願わない人はいないだろう。中国に「医食同源」という格言がある。医は、病気を治すこと。病気にかからないこと、予防を含め、医療の根源は、食べ物と源を同じくする。言い換えれば、食物が医につながるということである。長寿者の多い沖縄県が昆布の消費量が全国一であることは、昆布類がとても体によく、長寿の一因を担っていることが分かってきた。
健康食品としての昆布の成分
健康食品としての条件は、身体によくて、おいしい、安価である などがあげられる。この条件にあてはまるものの一つが昆布であり、昆布はおいしく、高血圧を抑え、抗がん性があり、食物繊維を豊富に含んでいる。
(1)たんぱく質
昆布のたんぱく質は、野菜類と比べて約2倍多い。とくに必須アミノ酸を多く含む。これらのアミノ酸は、昆布の旨み成分の主体となるグルタミン酸、アスパラギン酸が特に多く含まれており、「味の素」は、最初、昆布より作られ、日本の味の元素と言われる。
(2)脂質
昆布の脂質は、身体に良いとされる不飽和脂肪酸が多く含まれ、乾燥昆布で2%前後と一般の海藻の2倍含まれる。
(3)炭水化物 −高血圧抑制、抗がん、食物繊維ー
昆布の炭水化物は、3つの特徴を持っている。
@陸上植物における澱粉に相当するもので、多糖類としてのラミナリンがある。乾燥昆布の中に25%も含まれる。このラミナリンが、東北大学医学部の竹本教授(薬学)により、高血圧を下げる大きな効果がある成分として抽出されたものである。この成分は、昆布の学名「ラミナリア」から「ラミニン」と命名されて、患者に使用されている。
A昆布の細胞間に充填物質として含まれているもので、アルギン酸がある。アルギン酸には、薬品素材として、また工業用原料としての用途がある。
アルギン酸ナトリウム5%溶液は、商品名アルロイドG(共成製薬)として、消化管手術後の止血剤として、また胃・十二指腸潰瘍の止血、手術後の逆流性食道炎の適応症として用いられる。また、局所止血剤としての効果も高く、アルト、アルローゼ、アルマン、アルロイド、ゾルフォームなどとして用いられる。
カナダの研究者ヘスプ(1965年)によると、アルギン酸ソーダ7グラムを摂取して30分後、ストロンチウムを飲んだとき、10日から20日後の人体内の残留ストロンチウムは、摂取していない人の8分の1になることを調査した。 原発事故のとき、アルギン酸ソーダやヨウ化カリウムの錠剤を被災地域住民は飲むなど、放射線事故対策の必需品として用いられる。
昆布に含まれるU-フコダインは、72時間でガン細胞をすべて自滅させた。(大津市 宝酒造より)。昆布に含まれるUフコダインがガンにも効くということは、朗報ともいえるだろう。
B食物繊維
昆布などの炭水化物に含まれる食物繊維は、近年その役割が見直されてきている。昆布には、セルロース、ヘミセルロースの他に、アルギン酸、ラミナリン、フコイジンなどの食物繊維が含まれている。マコンブの場合、食物繊維は13〜15%で、その約半分はセルロース、次いでヘミセルロースである。日本人の平均寿命が世界一の理由の一つとされている食物繊維摂取による三大効用は、次のとおりである。
1.腸での微生物の働きを調節する機能
2.消化吸収を調節し、便秘の防止機能
3.コレステロール濃度の低下及び、有害物質の排出促進
(4)ミネラルなど
昆布の特徴は、ヨードが極めて多いこと、及びカルシウムが多いことである。その他にビタミンA1、ビタミンB2含有量が海藻類の中で一番多く健康食品としてすぐれた性質を持つ。
@ヨード
昆布には、甲状腺の病気(クレチン病)や短躯病の特効薬とされている。昆布に含まれているヨードは、同じ褐藻類のワカメの30倍、アラメの800倍もあり、魚肉の2万5000倍、玉ねぎ・にんじんの50万倍も含まれている。
Aカルシウム
カルシウムとビタミンDが不足すると骨粗しょう症になる。それは、カルシウムが不足すると、カルシウムが骨から血液中に溶け出し、骨がもろくなり、寝たきりが増加する。昆布やワカメなどは吸収効果の高い活性アミノ酸カルシウムが多いので、カルシウム中の吸収率も、牛乳についで高い。
地球温暖化対策としてのコンブ
地球温暖化は、環境問題として、21世紀文明の危機を表すものとして危惧されて久しい。地球温暖化が始まったのは、産業革命による石炭・石油など化石燃料の大量消費によって、二酸化炭素が大量に発生するようになってからである。
1997年度の日本の二酸化炭素の排出量は3億3200万トン、一人当たり2,65トンを排出している。90年度と比較しても、一人当たり排出量で0,17トン、総量で約2500万トン増加しているという。この二酸化炭素こそ、地球で反射されて宇宙空間に出て行くはずの太陽熱を抱え込み、大気中の温度を上昇させる温室ガス効果をもたらし、地球温暖化の最大の要因となっている。
地球温暖化は、「二酸化炭素など温暖化ガスが大気中に増えることで、地球の気温が上昇すること」である。二酸化炭素は光は通すけれども、熱は蓄えて逃がさないというやっかいな性質がある。
国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告では、今後100年で地球温度が3度C上昇し、海水面上昇で水没する陸地が出てくる。異常気象で水や食料に重大な影響が予想されると発表した。この地球温暖化対策の一つとして、利用できるのが養殖コンブである。
地球上で光合成を行い二酸化炭素を固定し、有機物を作る生産力が大きい熱帯雨林やノコギリモクよりも大きいのが、養殖コンブであり、成長が六ヶ月で4メートル(一日平均2センチ)と早く、北海道から鹿児島まで全国展開ができるのである。
日本国が養殖コンブを国策として実施するには、水産資源増大という狭い観点からではなく、21世紀の環境立国日本の主要な柱としての位置づけに価値があると思われる。
アルギン酸工業とコンブ
アルギン酸とは?
アルギン酸とは、コンブなどの褐藻類特有の成分とされていることから、昆布酸、海藻酸などともいわれている。その利用は、高分子化合物で親水性物質であることから、増粘性、保形性、保護コロイド性、乳化安定性、保水性、保香性、皮膜形成性、繊維形成性、泡沫安定性などに用いられる。これらの特徴を有するため、食品工業、繊維工業、化粧品工業、医療、医薬分野、農業、バイオリアクターの固定化剤など 利用が多岐にわたる。
食品工業への利用
@食品添加物として、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)などがある。添加の目的は、増粘性、保水性向上、ゲル化剤、エマルジョン化および安定化、耐酸性、耐塩性、起泡安定性、凝集性、フィルム形成性などである。
A機能性食品として、ダイエット食品、食物繊維および整腸作用食品に利用。
B金属イオン吸着・排出性
Cウィルス抑制効果
D化粧品原料として、アルギン酸は高い粘性とべとつかない性質から、潤滑剤、濃厚剤、増粘剤として利用。クリーム、ローション、シャンプーなど
E工業用原料として、防水糊材、硬水処理剤、セメント、石鹸、歯磨き剤への配合など
F繊維及び紙材としての応用
G防染材として、アルギン酸は、反応染料と反応しない防染料剤としての特徴を持つ。
H農業への利用として、近年注目されているのは、アルギン酸の人工種子への応用がある。これは、繊維培養によって増殖させた不定胚や不定芽をカプセルに包埋し、種子の機能を持たせるものである。
バイオマスとしてのバイオリアクターの固定化剤
ガソリンより安価に燃料用アルコール生産ができ、化石燃料の代替エネルギィー源として期待されている。
コンブの医薬分野への応用
@歯科での印象材
A各種薬品素材 アルギン酸の持つ各物質との親和性が高いことから、各種の薬品の支持体、分散剤、結合剤、保湿剤などに利用。
B薬剤の徐放効果
C高血圧治療剤 乾燥昆布に25%含まれるラミナリンは、高血圧の特効薬であり、「ラミニン」として、患者に用いられている。
D消化管などの止血剤
E原発等の放射性事故必需品
Fエックス線撮影時の造影剤
肥料および畜産・養殖飼料への応用
@海藻肥料 粉末タイプ、海藻液肥(葉面散布剤)、土壌施肥、
A畜産飼料
磯焼け・赤潮対策としてのコンブ
|