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宇和海の環境と、産業の共生をめざして |
序文 宇和海に緑をひろげ環境を守る会 会長 古谷 和夫
我々は宇和海から多くの恵みを得ているが、魚類養殖にしても真珠養殖にしても、その収穫物は海への人為的な付加の見返りである。また、一般市民の人たちも生活排水等を通じてやはり海に負荷をもたらしている。したがって、恵みの海を恒常的に利用してくためには、やはり人為的に負荷を取り去ることが必要であり、ひいては地球環境の修復にもつながると考えた。そして具体的には、九州などの先進地での取り組みに習い、「水生動物の養殖で傷めた海を、海藻の増殖で修復する」 ことにし、コンブの海中林をつくることにした。
専門家によれば、コンブは海中の窒素やリンや二酸化炭素の吸収能力にすぐれ、光合成による二酸化炭素→酸素の変換能(単位面積あたり)は熱帯雨林の2倍以上に及ぶという。また、宇和海では越夏できないので新たな環境撹乱要因にはつながりにくいこと、さらに、そのコンブをエサにアワビや養殖するなど「ゼロエミッション型のつくる漁業」の鍵種ともなりえること、などが海藻のなかでもコンブを選んだ理由だ。
収穫されたコンブは、それぞれが料理素材としたり、マダイ養殖用のモイスペレットに混ぜたりして利用されているが、今後はミカン栽培の肥料などとしても活用してもらい、それが山村と漁村との交流活性化にもつながればと思っている。
また、こうした取り組みが契機となって、環境問題を自分達自身の問題ととらえ、その保全のために積極的に行動する人材がより多く育って欲しい。
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守る会 沿革 事務局長 村田 八郎
宇和海に緑を広げ環境を守る会の現在の会員数は250名(2006.5現在)で、一般市民、漁業、系統関係者より構成される。「漁業者会員と一般市民会員との一体感がある組織だと感じているが、より多くの市民の参加を期待している。生活者も海を汚しているとの自覚をもち、海を元気にするためには漁業者と協力して取り組んでほしい
守る会としては、@海藻増殖による水質浄化 A海と共生する適正養殖 B石けん使用とごみ削減 C魚付保安林の保護と緑を広げる運動 D地球温暖化防止対策 などを主なテーマに学習会や普及活動を展開してきており、コンブ収穫祭は@の象徴的イベントです。 また、コンブうどんなどの提供により、年会費(1人1000円以上)への還元ができる機会でもある。
ちなみに06年度の収穫祭で陸揚げされたのは、宇和島湾内で垂下育成されていた分。「守る会」メンバーらによる宇和海全域での今期のコンブ収穫量は約60トンに達し、それは炭素・窒素・リンにして約3.6トン分に相当すると見積もられるそうだ。 |
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今、なぜ海の森づくりか? 海の森づくり推進協会代表理事 松田 惠明
私たちは、太古の昔から海の恩恵を受け、発展してきました。特に、かつて水産王国を自負した日本は南北3千キロに伸び、四方を海に囲まれ、3万5千キロという地球円周の85%に相当する海岸線をもち、国土の十数倍に相当する447万平方キロという排他的経済水域を有する世界有数の海洋国です。21世紀は海の時代といわれるように、賢い海の利用に対する期待は世界的に高まり、国民生活の安全保障に貢献する多面的機能をもつ水産分野では、日本のリーダーシップが問われています。
しかし、人間本位の利用の結果、海は病み、磯やけや赤潮はつづき、沿岸資源は枯渇し、沿岸漁村では過疎化がすすみ、水産は起死回生を迫られています。このような状態から脱皮するためには、埋め立てや護岸で破壊された藻場の再生が必要です。しかし、、天然の藻場再生は至難の業です。そこで考えられたのが、、確立した養殖技術を駆使して、津々浦々に散在する漁業共同組合と連携して大型海藻を毎年栽培する私たちの海の森作り方式です。
この「海の森作り方式」は、水中のCO2や富栄養化した沿岸域の栄養塩を吸収し、酸素も供給して海水を浄化するのみならず、不特定多数の魚介類の産卵場や揺籃場をつくり、生態系を多様化する栽培漁業革命技術です。そのお手本は中国にあります。この運動は1994年に鹿児島ではじまり、今では鹿児島県にとどまらず、熊本県、長崎県、愛媛県、徳島県、沖縄県、富山県、三重県、千葉県等へと広がりを見せております。
そうして、「海の森作り」は、生産活動だけでは完結しません。生産物は収穫して、経済的に利活用し、その運用益でさらに「海の森づくり」活動を持続することが重要です。
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海中林は命のまほろば 東京海洋大学長 高井 陸雄
四方を海に囲まれた日本においては、人が住み始めたそのときからコンブを含む海藻類を食べていたことが、容易に想像できます。海藻類を食べることによって微量有効成分、とりわけヨウ素を自然に摂取し健康で明るい生活を過ごしてきたことと思います。地方に今も伝わる、コンブを素材とする伝統食品にはその地の知恵と工夫が凝縮されており現代の科学の力をもってその働きと効果を説明することができるようになっています。
北海道は古来よりコンブの名産地です。コンブを中国に輸出するための中継地である沖縄へ運ぶ航路をコンブロードと言っておりますが、主要なロードは北前船航路と呼ばれる日本海側が主要な道筋でした。もちろん寄り道をするのがロードですから日本海側にはコンブを上手によく使う町が沢山あります。もってこられたコンブのおかげで沖縄の人たちは長寿を誇ってきましたが、今ここに来て食生活が変化し、コンブを食べる機会が少なくなってきています。それが、沖縄の皆さんの健康に微妙な影を落としはじめているようです。
地球環境の調節機能をもつ海の役割は大変大きいのですが、そこに繁茂する海藻類は陸上の熱帯雨林やその他の陸上の植物と同じように、地球環境を人類にとって快適に保つ役割も果たしているのです。海中林は多くの生物が共生する豊かな海の森なのです。
時に、海の森を食べに来る生物によって森が丸裸にされる食害に悩まされるのですが、このとても抑制のきいた生物の利用により食害は防ぐことはできるもんと期待できるでしょう。海は地球表面の70%を占めています。ここを上手に利用することを考えるのが我々ホモサピエンスの仕事となってきました。「杉花粉症」のようなことにならない取り組みをしなければなりません。
「森は海の恋人」であるならば、「海中林は命のまほろば」でありましょう。 |
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海の可能性 海の森づくり推進協会代表理事 松田 惠明
陸の資源の有限性が明らかになる中で、海洋産業の可能性が注目されている。しかし、、海には、流体の壁、圧力の壁、塩分の壁 等があり、その可能性を拓くには、多大な投資と努力と時間が必要であり、国民的理解がなければかなわない。その国民的理解に基づく自然との共生産業で、多面的機能をもつ沿岸漁業があげられる。仁尾hンの沿岸漁業の活性化を通して国民的理解を深めることこそが、日本の海の時代を拓く鍵である。
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起死回生を迫られる我が国水産業 海の森づくり推進協会代表理事 松田 惠明
かつて「水産王国」を自負した日本の水産は石油危機、200海里体制下の漁場制限、イワシの激減等によってその漁獲量はピーク時の半分にあたる600万トンまで減少し、沿岸捕獲漁業の漁獲量はついに約150万トンまで減ってしまった。これは、昭和20年の漁獲量をはるかに下回る。漁民の数は、戦後ピークを迎えた昭和26年の86万人から20万人にまで減ってしまい、日本の漁業は起死回生を迫られている。
しかしながら、古今東西を問わず、水産のように、人類の歴史とともにあり、水産以外に人類が抱える持続可能な海洋利用・人口・食料・環境・地域経済・難病・成人病等の問題の他、国家総合安全保障問題等重大かつ緊急課題の解決法として短期・中期・長期的展望を持つものは少ない。
過去の経験と現存するインフラを生かし、水産の起死回生を図り、日本の水産が責任ある漁業のモデルになることは、まさにいま海洋の新時代に向けた日本に求められている国際貢献である。そして、その芽は日本にある。
かつて日本漁業の独断場であった東シナ海・黄海・渤海で、昭和53年の改革開放政策の下、中国の捕獲漁業が急速に伸び、今では1,400万トンの漁獲を挙げ、日本へも大量に輸出している。この原因として考えられるものは、大連から福建省におよぶ沿岸海域1,300キロメートルに及ぶコンブ等海藻類養殖による12月から6月までの人口海中林の存在である。現在の中国の海藻生産量は湿重量で約600万トンで、日本の海藻総生産量の10倍を超えている。これらの海中林が、海洋環境を改善し、魚介類の産卵場や揺籃場となったと考えられる。この膨大な海中林のきっかけは、昭和5年に北海道から導入されたマコンブの養殖だ。
私たちは、「この中国から学ぶべきことはないだろうか?」と考えた末出てきたのが、コンブを使った「海の森づくり」であった。私たちが提唱する日本沿岸域における水産資源倍増計画は、「海の森作り」と「その生産物の利活用」を車の両輪とし、全国津々浦々に分布する漁協・漁民・漁村を中核として、循環型社会目指す組織・個人の支援を得て、「海・山・川と森と里と都市」を結ぶネットワークの輪を広げ水産資源を倍増しようとしている。運動の現場は、沖縄、鹿児島、熊本、長崎、福岡、愛媛、徳島、広島、島根、福井、富山、神奈川、、千葉の各県等に広がっている。その骨子は次のとおりだ。
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100mコンブ種糸運動
これは魚介類養殖業者がこれまでの単一養殖から海藻等を含めた複合養殖に切り替えるための運動である。裏作として出荷後の空生簀や利用中の生簀・ロープ等を利用して鹿児島県の錦江湾以北であれば6ヵ月で約2万円する100mの種糸から約20トンのコンブ生産は可能である。養殖漁家はこれによって薬剤の使用が減り、歩溜りが高まる可能性がある。また、東町漁協のように魚類生簀面積と海藻養殖面積を1対1にすれば、200万トン(現海藻総生産量の約3倍強)の海藻養殖生産も可能であり、漁船漁業者に対しては藻場効果が発揮される。消費者に安全・安心食品を提供する養殖が求められている今、これは今後10年間の目標として決して無理ではない。 現在日本には約2000の沿岸地区漁業協同組合がある。その約25%に当たる500地区の共同漁業権水域の外縁に毎年1万トンの生産用の浮沈式コンブ等海中林藻場を造成維持すれば、年間500万トンのコンブ生産が可能となる。一セット一億円程度の浮沈式施設の建設には国から50%の補助がでるので、地方j自治体やNPO等の協力を得た漁協管理下の海中林造成事業として赤潮・青潮等対策としての環境浄化と不特定多種の増殖効果が期待でき、漁船漁業のみならず養殖の振興に繋がる。当初の5年間は、大規模海中林造成の環境影響評価等の研究や種苗生産等の建設などインフラ整備にかけ、後半の5年間は全国普及を図ることになる
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生産物の利活用
養殖技術が確立している大型海藻であるため、取り扱いが簡単だ。そして食用、薬用、餌、肥料、工業用原料等コンブの利用法は多い。先ず生産物の地産地消がある。養殖業者は生産物をアワビやカワハギなど魚介類の餌として利用できる。食用としては生食・食品加工用素材・食品増量材・添加剤・機能性食品等として利用できる。薬用としてはヨード欠乏症や癌にきく。肥料としてはスイカ等の糖度を増したり、科学肥料を長く使った畑でとれる野菜の硝酸態窒素を蛋白質に変える働きがあり、生ゴミ処理用コンポストの分解細菌を増やす触媒としても使える。また、工業用原料としてはアルギン酸等の食用以外に染料・潤滑油・化粧品等の添加剤に使える他、バイオマスエネルギィー源にもなる。生産物の利活用が現金収入に結びつきだせば、その藻場造成事業は経済自立性を持ち、地域振興につながる。 |
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これまでの藻場造成や栽培漁業との違い
私どものアプローチはこれまでの藻場造成や栽培漁業と次の諸点で異なっている。
管理主体は漁民であり、毎年12月に種を沖だしし、4〜6月頃に収穫するという作業が入り、一過性の仕事ではない。
浮沈式ロープ式大規模海中林造成というソフトな養殖技術を駆使した人工の藻場造成で、従来の藻場造成や栽培漁業にない弾力的運用ならびに広範囲の応用が可能である。毎年生産物が収穫されるので沿岸域の優先種となることはなく、環境浄化にも繋がる。
従来の藻場造成や栽培漁業のように単一種を対象としたものではなく、不特定多数の生物を育み在来種を取り組んだ新しい生態系を創生し、沿岸域の生物多様性に貢献する。
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