環境律市 宇和島(宇和海に緑をひろげ環境を守る会)
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宇和海の環境と、産業の共生をめざして


海の環境に関わるメカニズム

(1)海洋での物質循環とホメオスタシス(恒常化機能)
 地球は、大まかに分けて、大気圏、地圏、水圏の3領域(スフィア)に分けられます。海洋は水圏の大部分を占めますが、ここで海水の循環にのせられて、さまざまな物質が循環するのです。 さらに、大気圏から海洋へ、陸(地圏)から海洋へというように、スフィア(領域)間の物質の流れが存在します。地球が他の惑星と違うのは、3つのスフィア(領域)にわたって多様で豊富な生物が生息していることにあるのですが、この生物の集合の部分を生物圏(バイオスフィア)といいます。植物プランクトン(一次生産)→動物プランクトン(消費者1)→魚(消費者2)というように食物連鎖を通じて、生物間の物質の流れ、または生物から生物遺骸への物質の流れなども、 物質循環にとって重要な要素になります。
 物質が全く循環せず、その区画に固定されたままだったら、現在の地球のような安定した環境はできなかったでしょう。そうして地球と太陽が偶然、絶妙な位置関係にあったため、地球には、液体としての水(H202)が存在できたのです。

水は、他の物質に比べて、以下のような特別の性質を有しています。
 1.熱容量が大きいので、少々の熱の出入りがあっても、その温度が一定に保たれやすい。
 2.さまざまな物質を溶かし込みやすい
 3.可視光線をよく透過させ、赤外線や紫外線をよく吸収する
 4.大気に比べて粘性が大きく、比重も大きいので、粒子を浮遊させやすい
 5.流動性があるので、物質を移動させる働きがある

 このような性質は、陸や大気に比べると、急激な温度変化や紫外線に影響を受けにくく、体表面のすぐ外の物質を吸収し、しかも海面からある程度の深さまで浮遊師ながら、立体的に太陽光のエネルギィーを利用できるといった、生物にとって欠かすことの出来ない環境を生み出しました。
 このような条件の下、海洋で初めて生物が誕生しました。そして、陸上の生物もまた、生存のために海洋の環境を自分の体内にミニ海洋として包み込み、陸上の運びこんだといってもよいでしょう。特に、高等動物では、少々の環境変動があったとしても、体の状態を一定に保つ 恒常化機能(ホメオスタシス) が備わっています。例えば、運動を始めると心臓の鼓動が早くなり、酸素補給が増加し、筋肉の酸欠を解消するというような具合です。地球自体は生物ではありませんが、高等動物の持つホメオスタシスとにた性質をもっているのです。地球を高等動物に例えるよりも、むしろ高等動物の設計が地球の機能に適応したといったほうがよいかもしれません。

(2)親生物元素(炭素・窒素・リン)のストック(貯留量)とフラックス(流量)
 炭素(C)、窒素(N)、りん(P)などの物質は、生物活動に必要な素材であり、親生物元素と呼ばれます。そして、これらの元素の海洋での循環を明らかにしていくことがポイントになります。物質の循環を表現するときには、物質が蓄えられている貯留槽(レザバー)と、各レザバーの間の流量(フラックス)を使用します。様々なレザバー(貯留槽)の定義の仕方がありますが、ここでは、@陸域生物 A生物遺骸(腐食) B無機質土壌 C沿岸海水 D沿岸海洋生物 E沿岸海洋堆積物 F外洋表層 G外洋生物 H深海土壌 I大気 のレザバー(貯留槽)を設けます。スフィア(領域)が空間の区分けだったのに対して、このレザバーの区分けは、生態学的な意味もあるのです。
 大気は、生物量が少ないことと、対流圏全体でもおよそ数十日で交換してしまうため、一つのレザバー(貯留槽)で代表できるのです。しかし、海洋は、沿岸海域と外洋域、表層と深海、海底堆積物の間で交換が弱く、さらに特性が大きく変化するため、大まかに分けても6つのレザバー(貯留槽)が必要です。(ここでの沿岸海域とは、海岸端という意味でとらえるのではなく、内湾や大陸棚などの比較的浅い海を総称します)。

 各レザバー(貯留槽)に蓄えられている各物質の量を貯留量(ストック)と称し、貯留量の単位は、元素の重量でメガトンなどが使用されます。また重量の代わりに分子の数量としてモルが使われることもあり、フラックス(流量)には、ある単位時間あたりの流量という意味でギガトン/年なども使われます。

 元素の循環やフラックス(流量)の数値だけを見ていても、いまひとつ感覚的にピンとこないと思われるでしょう。一つのポイントととして、農業、工業、都市活動など人間の活動によって生じるフラックス(流量)が、本来の自然の循環のフラックス(流量)と比べて、どれほどの程度に到達しているか?ということが問題なのです。 もし、自然の物質循環環境に匹敵するようであるならば、注意領域に或いは、危険水域に入っていると見なさなければなりません。 そうして 親生物元素である、炭素、窒素、リンの循環が本来の自然の循環と人為的なフラックス(流量)がどのような関係にあるのかを知ることが、環境を考える上で必要になってくるのです。

(3)炭素循環
 炭層循環とは?
 炭素循環とは、地球上の生物圏、岩石圏、大気圏の間で交換される炭素の生化学的な循環をいいます。 そうして、これらの圏域は炭素の保管庫(リザーバー)となっています。
 炭素循環は、一般的にこの4つのリザーバー(保管庫)、わかりやすく言えば 大気、陸域生物圏(陸水系は通常ここに含まれる)、海洋、堆積物(化石燃料を含む)と、その間を相互に行き来する経路で成り立つのです。年間の炭素の移動は、リザーバー(保管庫)間で起こるいろいろな化学的、物理的、地質学的、生物学的な経過を通して行われます。ちなみに地球表層付近での最大の炭素保管場所は海洋なのです。

 地球全体での炭素収支は炭素リザーバーの間、もしくは特定の循環(特に大気ー海洋間)での炭素交換のバランス(吸収と放出)で示されます。 炭素収支を検討することで、リザーバー(保管庫)が二酸化炭素の吸収源になっているのか、または 発生源になっているのかを判断することが出来るのです。

大気中の炭素
 大気圏中の炭素は気体は、主として、二酸化炭素ガスの状態で存在します。全大気中では、少量(増加しつつあるが、およそ0.04%)ですが、生命活動を維持するための重要な役割を果たしています。大気中に存在する炭素を含む気体では、他にメタンガスやクロロフルオロカーボン(大部分が人為起源)があり、これらは皆、温室効果ガスになります。この大気中への温室効果ガスはここ数10年で増加の一途をたどり、地球温暖化の原因になっています。

 炭素は大気から二つの経路で除去される
 生物ポンプ
植物が太陽の光により、光合成を行い、二酸化炭素から炭水化物を合成し、その過程において酸素を放出します。植物プランクトンや、森林の樹木が成長などから、この過程がよく二酸化炭素を吸収すると考えられています。
 溶解ポンプ
 これは、物理的、化学的に大気から海水に二酸化炭素が溶け込むことです。また温度が低いとより二酸化炭素を吸収します。極地付近の海洋表層では海水が低温なため、より多くの二酸化炭素を溶かし込むが知られています。
 アルカリ度ポンプ
 深海では、炭酸カルシウムの中和のために、有機物が分解した割合ほどには二酸化炭素分圧が高くならないことがわかっています。このことは、深層の海水が湧昇して海面表層に出てきたときに、本来もっと高いはずの、二酸化炭素分圧を抑えていることになります。これは、結果的に海洋の二酸化炭素の吸収する能力を高めています。

 炭素は様々な経路を経て大気に再び放出される
 植物や、動物の呼吸による放出があります。これは、発熱反応で、グルコース(もしくは他の有機分子など)が二酸化炭素と水に分解される過程からなります。
 植物や、動物の分解(腐敗)。菌類やバクテリアなどが、動植物の遺骸を構成する有機物を分解し、炭素を酸素がある場合は二酸化炭素に、酸素がない場合はメタンに変えます 有機物の燃焼(炭素を含む物質の酸化反応を含む)による排出。石炭や石油製品、天然ガス等の化石燃料の燃焼で放出される炭素は、何百万年もかけて地圏に貯蓄されますが、この燃焼が、現在、大気中の二酸化炭素レベルの増加を招き地球温暖化の原因になっています。
 石灰岩反応による放出。石灰岩、大理石、チョークは主に炭酸カルシウムで構成されています。これらの岩石の堆積物は、水で浸食されると、炭酸カルシウムが分解され最終的に二酸化炭素と炭酸に分解されます。セメントや酸化カルシウム(消石灰)は石灰岩に熱が加わることで形成されますが、この過程も無視できない量の二酸化炭素が発生します。
 海洋表層での大気への放出。海水に溶解した二酸化炭素は温暖な海域では放出されやすいケースがあります。
 火山活動による大気への炭素の放出。

生物圏の炭素
 炭素は地球上での生命活動において基本となる物質で、細胞骨格、生化学、栄養作用などにおいて非常に重要な物質です。また、生命は炭素循環においても重要な働きを果たしているのです。
 独立栄養生物は大気中、またはその生息環境に存在する水に溶解している二酸化炭素とから有機化合物を自ら生産する生物です。これには、太陽光などのエネルギィー源を必要とします。炭素循環で最も重要な生物は、陸上の森林の樹木と海洋の植物プランクトンです。
 炭素は、生物圏の中で従属栄養生物(独立栄養生物を食べたり、分解して生きている生物)に摂取、変換されます。菌類やバクテリアによる腐敗や発酵という、生物の遺骸や排出物の分解も含まれます。
 生物圏から排出される炭素は、呼吸によるものが最も多い。酸素が存在する環境では、好気呼吸の作用で二酸化炭素を周囲の大気や水に放出します。一方、嫌気呼吸では、メタンを周囲の環境(大気圏や水圏)に放出します。
 遺骸として分解されずに生物圏に炭素が残留することもある(泥炭など)が、地圏移行するものもあります。特に炭酸カルシウムでできている動物の殻(サンゴや貝殻など)は堆積過程を経て石灰岩となります。

(4)窒素と窒素循環
 窒素とはどんなものか?
 窒素は、空気成分の約80%を占めている、無味、無臭、無色の気体です。英語ではNitorogenと言い、窒素の元素記号はNで表されます。
 窒素原子1個は不安定で、自然界では、窒素原子が2個結合した状態(N2)の状態で存在することになります。そうして窒素は他の元素と化学反応して様々な物質をつくります。ニトロなどはその一例です。他にも硝酸や亜硝酸、アンモニアといったものや、蛋白質を構成するアミノ酸や遺伝子の構成成分である核酸にも含まれます。
 このように、生物が生きるために、必要な窒素が様々な形をとりながら、私たちの周囲を循環しています

窒素循環 窒素は大気から始まり、様々な細菌を経由して植物などに入り、人などの動物に入り、さらにそれからまた細菌などを経由して大気へと還っていく循環を繰り返しています。これを「窒素循環」といいます。
 私たちは、窒素を直接利用することはできませんが、細菌の中には大気中の窒素を取り込んで、体内で代謝し、この窒素を利用して様々な窒素を含む物質を生産するものがあります。これを窒素固定といいます。
 緑色植物も大気中の窒素を直接利用して、代謝をする能力は持っていません。これより、細菌が生産した硝酸や亜硝酸、アンモニアを吸収して代謝を行い、蛋白質やアミノ酸、核酸などの窒素化合物を生産し、生きているのです。
 私たちは蛋白質を3大栄養素の一つとして摂取しています。蛋白質には動物性のものであれ、植物性のものであれ、アミノ酸を含んでいますので、体内に窒素が入ることになるのです。これが、私たちの体内で代謝されると、アンモニアが出来ます。アンモニアは毒性が高いので、それを私たち人間などは尿素回路という代謝系を使用して、尿素という他の窒素を含む物質に変換し、体外に排泄するのです。私たち人間は、一日約50グラムの尿素を尿中に排泄しています。他の動物ではアンモニアを直接排泄するものもありますし、尿酸という窒素化合物として排泄するものもあります。
 これら排泄された尿素や尿酸も、ある種の細菌によってアンモニアに置換されます。さらにアンモニアは、やはり次の細菌によって硝酸や亜硝酸の形に置換(硝化)されていきます。 また、この硝酸や亜硝酸を利用する細菌も存在し、それらがこれを窒素ガスに変えると、ガスは大気中に戻るのです。
このような、窒素循環が乱れ始めています。というのも、人間が植物などを育てるために、人工的に窒素肥料を作り出してから、余分に自然界に窒素化合物が出始め、自然界で処理しきれない窒素化合物が土壌などに残ってしまうような事態が起こっているのです。そうして、これらが、水域に流入すると湖や海の富栄養化現象を起こすことにもなるのです。だから人間活動が窒素循環の変動をまねきつつあることをよく理解し注意する必要があるのです。

(5)リンの循環
 リンとはどんなものか?
 リン(P)は生物の構成成分である核酸、ATP、骨などに必要不可欠な存在で、しかも本来は生物圏では、不足しがちな元素です。リンの濃度は陸水、海水ではきわめて低く、陸域では比較的高く存在します。土壌中のリンは物理・化学的風化や微生物の作用により形成されます。

 リンの循環 
リンの循環は窒素と似ています。ただし窒素がガス態を含むさまざまな形態を持っているのに対し、リンはガス態にはなりません。これより自然界でのリンの循環は地圏に含まれていたリンが風化作用などにより河川水に溶けだし、、海に入って海洋植物プランクトンの光合成・分解のサイクルに参加することが主になります。また、そのリンの一部は、このサイクルからはずれて、海底堆積物中に埋まるものもあります。
 本来、このリンの自然循環である 地圏→川→海→海底堆積物という自然の一方通行のところに、人間活動が入ることにより新たなリンの流入が起こっています。土壌中のリンの不足を補うために、化学肥料を土壌に投入したり、家庭用合成洗剤、金属洗剤、加工食品、飲料、飼料などにリンが添加されることでそれらが、下水道を通って河川や海に流入し湖や沼、海の富栄養化を起こすのです。この方面から、人間生活の面で海に向かう排水にも注意が必要です。

(6)海の物質循環の異常
 炭素、窒素、リンの循環はそれぞれが、緊密に結び付き合ってバランスよく円滑に循環していれば、生態系は良好に保たれます。 ところが、そのバランスが崩れると、海の生態系に異常が起こります。 その例が、赤潮や青潮となります。

 赤潮
 赤潮とは、植物プランクトンの中で、主に渦鞭毛藻の仲間が海で異常発生する現象をいいます。 そうして、これら大量の赤潮藻類が死んで分解する時、海中の酸素を消費するため、養殖されている魚を酸欠状態にし、大量に死なせたりするのです。 また藻類自身に魚を殺す毒性があるとも言われています。 さらに、赤潮藻類の中のある種がカキなどに吸収され蓄積すると、それを食べた人が、まひ性貝毒による中毒症状を発症することもあるのです。

 赤潮の原因

 赤潮の発生には、、陸での生活排水の処理の問題、海域の養殖場としての利用の問題、ケイ素の補給にからんで陸上の土地利用の関わりなどが指摘されている。
 ケイ素との関係では、赤潮に季節変動があることから指摘されている。 この鍵は、比較的健康な海を代表するケイ藻が、そのケイ酸質の殻をつくるためにケイ素を必要とするところにある。春になり、光の条件がケイ藻の増殖に適してくると、ケイ藻が増殖してきます。 ケイ藻のブルーム(増殖)は、海水中の溶存ケイ素が吸収されつくしたところで終わります。しかし、海中にケイ素が枯渇した状態で窒素やリンが多量に残っていると、ケイ素を必要としない渦鞭毛藻がケイ藻に代わって、天下になるのです。
 山系で石灰岩が風化されたり、長石などの鉱物が風化されるとケイ酸塩が溶出します。このケイ素が海に供給され、ケイ藻の増殖に寄与しています。これに対し、リンや窒素は、沿岸の生活排水や、工業用排水など人為的影響により増加します。

 青潮
 富栄養化のもう一つの現象としてあげられるのが、この青潮現象です。この現象は、夏から秋にかけて青白色に変色した海水が現れることで、この現象が起こると卵の腐ったような硫化水素の臭いがたちこみ、海中では貧酸素状態になるため魚介類が死んでしまいます。

 青潮のメカニズム
 青潮の起きるメカニズムは、河川などから流れてきた有機性の汚濁物質や、植物プランクトン起源の有機物が海底に積もります。低層で有機性の分解が進むと、溶存酸素があるうちは好気性のバクテリアなどが働き、二酸化炭素と水に分解されます。ところが、酸素が使い果たされると、今度は硫酸還元細菌という嫌気性のバクテリアが働き出し、硫酸基から硫化水素ができます。これが、悪臭の原因となります。
 夏の間は、海面上層が加熱され、成層ができるので、海水の上下交換が行われにくく、この貧酸素水が下層にたまっています。ところが、秋口に陸から沖方向への風が吹き始めると、上層の海水が沖方向に運ばれ、これを補うように湾の奥で、下にあった貧酸素海水が湧き上がって来るのです。このとき、湧き上がった海水中の硫化水素が空気に触れ、酸化されて粒子状の硫黄ができるのです。
 青潮の問題は、見えない海底に貧酸素水が出来ていること、もっとさかのぼっていえば、自然の分解作用が追いつかないくらい有機性の汚濁物質が海底に積もっていることが上げられます。今後、家庭用排水処理対策と同時に自然の浄化機能を守り、復活させる取り組みが必要です。


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